FC2ブログ

観仏日々帖

新刊旧刊案内~「ミズノ先生の仏像のみかた」 水野敬三郎著  【2019.3.28】


仏像愛好者には、大変愉しい本が出版されました。


「ミズノ先生の仏像のみかた」 水野敬三郎著
2019年2月 講談社刊 【246P】 1800円


ミズノ先生の仏像のみかた

本の帯のキャッチコピーには、

「世界一確かな眼を持つ先生が語る  世界一確かな仏像講義」

と、あります。
水野敬三郎氏
水野敬三郎氏



著者、水野敬三郎氏は、ご存知の通り、仏教彫刻史研究の権威、泰斗といえる仁です。

現在、87歳ですが、東京芸術大学名誉教授、半蔵門ミュージアム館長を務められています。

「奈良六大寺大観」「平等院大観」「醍醐寺大観」などの執筆の他、現在発刊継続中の「日本彫刻史基礎資料集成・鎌倉時代造像銘記編」の編集責任者でもあります。



【彫刻史研究の大御所が、「仏像のみかた」をやさしく対話する本】


その仏教彫刻史研究界の大御所である水野敬三郎氏が、若いインタビュアーの質問に答えるという会話形式で、「仏像のみかた」が語られる本になっています。

冒頭、「はじめに」に、本書が出来たいきさつについて、このように綴られていました。

「数年前、知り合いを通じて紹介された編集者から、仏像のみかたについて話を聞きたい、できたらそんな本を作りたいという要望がありました。
歳は30代後半という彼女は、以前から京都や奈良の古寺めぐりが好きで、特に最近になって仏像についてもっと知りたくなったとのことでした。

そこで、ときどきお会いして質問に答えるかたちで仏像のみかたについて話をするようになり、その対話の積み重ねがこのような本になったわけです。
教室で講義するような堅苦しい感じではなく、お茶やときにはお酒を飲みながら気軽に話しましたが、時には脱線しそうになったり、少し専門的なところもあったりします。
・・・・・・
とにかく最初から最後まで通して読んでいただければ、仏像のみかたにもいろいろあることがわかり、こんな角度からみるのもおもしろいかなと思っていただけると思います。」

そのとおりで、大変優しい語り口で、愉しく読むことが出来ました。



【初心者向けの仏像入門書のような目次構成】


目次は、ご覧のようになっています。

ミズノ先生の仏像のみかた・目次2ミズノ先生の仏像のみかた・目次1

目次を眺めていると、仏像好きになった初心者向けの入門書的なガイダンス本のように思えます。

ところが、おっと どっこい!

読み進むうちに、一瞬でも、そんな侮った気持ちになったことを、ちょっと反省してしまいました。



【実は、豊かな識見に裏打ちされた、深イイ話があちこちに
~やさしい語り口ながら読み応え十分】

会話形式のやさしい語り口なのですが、長年の研究蓄積、深い見識に裏打ちされた、興味深い話、深イイ話が、あちこちにちりばめられています。

入門書のようですが、むしろある程度のレベルの仏像愛好者が、相槌を打ちながら、ちょっとした気づきを感じながら、気楽に読むのが最もフィットしているような気がする本です。

中身については、買って読んでいただくしかないのですが、ほんの一節を一二ご紹介すると、
こんな感じです。

《耳のかたち》

「平安後期の耳には特色があります。
定朝の平等院阿弥陀如来の耳が典型的ですが、・・・・全体が立体的ではなく非常に平たい。
・・・・・・・
それが鎌倉になると、もっと立体的になってきます。
深く彫って、上脚と下脚の出が大きく、それで立体的になってくる。

そしてまた、つくり手の個人的な差が大きく出てきます。
康慶の耳は、わりあいわかりやすい特徴があります。
耳の前側の部分が前に出てくるんですよ。
耳輪の前の端がぐ~っと巻いて、下脚の曲線も強く巻くのです。

運慶もそこから出発しています。
興福寺の木造仏頭は、2007年に運慶の作と確定しました。
ただ、この仏頭の耳は運慶でもわりあい変わった耳なのです。
それでかつて私は、この仏頭は運慶じゃないと言っていたのですが、しくじってしまいました(笑)。」


ミズノ先生の仏像のみかた・内容1
「ミズノ先生の仏像のみかた」該当ページ

《木彫~カヤと檀像》

「この頃の木彫像には、木寄せにも特徴があるものです。
そこに檀像の影響をみることができます。

例として神護寺の薬師如来があげられます。
突き出した腕のところを、ふつうだったら、腕と同じ方向に木目が通った材を使います。
ところがこの像は縦の材木を使って、体と木目を揃えているのです。

もう一つ例をあげれば、新薬師寺の薬師も神護寺の薬師と同じく縦の材を使って腕の木目を体の木目と揃えています。
・・・・・
ところがこの像の場合は、丸太を10個ぐらいに割った縦材のブロックを寄せてつくっているのです。
神護寺の薬師も新薬師寺の薬師も、できるだけ縦の材を使って、木目の方向を揃えようとしている。
・・・・・・・
この頃は檀像の意識が強くて、こういう木寄せをして一材つくったようにすることで、檀像風にみせようとしたということですね。」


ミズノ先生の仏像のみかた・内容2
「ミズノ先生の仏像のみかた」該当ページ

やさしい語り口ながらも、読み応え十分なところが、判っていただけたのではないかと思います。

気楽に読める本ですが、是非、一読をお薦めします。



【出版記念のカルチャー講座も開催】


本書の出版を記念して、朝日カルチャーセンター横浜で、水野氏による

「私の仏像のみかた~仏像を横から拝むと」

と題する単発講座が、3月2日に開催されました。

出かけてみたら、満席の盛況で、驚かされてしまいました。

本書にとりあげられている「仏像の体型、目のかたち、耳のかたちの変遷」についてのお話でしたが、愉しく聴かせていただきました。

ついでに、「著者サイン本」まで、ゲットしてしまいました。

ミズノ先生の仏像のみかた・著者署名
ゲットした著者サイン本



【旧刊の好著「仏像のひみつ」(山本勉著)のランクアップバージョン】


そういえば「仏像のみかた」の入門書的な本で、随分、人気が出て売れた本がありました。

「仏像のひみつ」「続仏像のひみつ」山本勉著 朝日出版 2006・2008年刊


仏像のひみつ

この本も、学問的知識に裏打ちされた仏像のみかたを、初心者でもよくわかるように平易な語り口と図解で語ったものです。
結構、話題を呼んで、仏像入門書ではベストセラー的になった好著だったと思います。
本書の著者、山本勉氏の師匠格となる人が、水野敬三郎氏です。

「ミズノ先生の仏像のみかた」 は、この「仏像のひみつ」の視点、構成をふまえつつ、もう1ランク、2ランク中身の濃い話、深い話がやさしく語られた本といってよいと思います。



【ミズノ先生著の必読仏像解説書を、もう1冊ご紹介
~ジュニア新書とは思えない中身の濃さ】

ついでに、水野敬三郎氏の判りやすい仏像解説書を、1冊ご紹介しておきたいと思います。

「奈良・京都の古寺めぐり―仏像の見かた」水野敬三郎著  岩波ジュニア新書 1985年刊 【242P】 860円


奈良・京都の古寺めぐり

この本も、仏像のみかたの入門解説書として執筆されたものです。

奈良京都の著名で美術史上重要な仏像が、時代を追って1体ずつ採り上げられています。
法隆寺釈迦三尊像から始まって興福寺北円堂の諸像まで、15件が解説されています。

この本
「ジュニア新書と、あなどるなかれ!」
という、中身の濃いい内容です。

「ジュニア新書」は、中高校生向けの新書のはずですが、
「これを中高生が読んで、よくわかる、愉しく読めるというのは、到底無理」
というレベルの内容です。

一方で、大変平易な語り口で、深く中身の濃い解説がされていますので、仏像愛好者が仏像彫刻史をわかりやすく学ぶという意味では、これほどの格好の書は無いように思っています。
時代を代表する仏像の造形の特色、技法、美術史的意義などがコンパクトかつ丁寧に語られています。

私は、仏像好きになって相当の年数がたってから、この「ジュニア新書」を読み返したときに、書かれた内容の濃さ、重みが判ってきたような気がしています。

もし、読まれたことがなければ、お薦めの一書です。


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
https://kanagawabunkaken.blog.fc2.com/tb.php/183-15e27ebf
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)