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観仏日々帖

古仏探訪~2017年・今年の観仏を振り返って〈その5〉 11~12月 【2018.01.07】


あけましておめでとうございます。

今年も「観仏日々帖」ご覧いただけますよう、よろしくお願いいたします。

とうとう、年越しになってしまった、去年からの「今年の観仏を振り返って」は、〈その5〉、11~12月の観仏のご紹介です。



【11 月】



【久々に心地よい満足感に浸された、細見美術館の「末法展」】


良い展覧会を京都で観ることが出来ました。
見終わって、心地よい満足感と爽快感で満たされた仏教美術展でした。

細見美術館「末法展」ポスター
京都岡崎の細見美術館で、開催されている 
「末法~失われた夢石庵コレクションを求めて~」
と題する展覧会です。

「今は亡き幻のコレクター夢石庵の、散逸した蒐集品を一堂に会する。」

と銘打って、開催された個人コレクションの展覧会でした。

訪れる人もまばらで静かな展覧会でしたが、一本、目筋の通った美の感性、鑑識眼を感じさせ、キラリと光る粒ぞろいといったものが揃っていました。
久々に、「心安らぐ、落ち着いた美」のなかに、身を置くことが出来、良き展覧会を観たという気持ちになりました。

この展覧会については、
観仏日々帖「『夢石庵とは何者か?』 細見美術館で開催中の『末法展』 」
で紹介させていただきました。
「夢石庵とは何者か?」の種明かしについては、そちらをご覧ください。

とりわけ眼を惹いた仏像は、

法隆寺伝来とされ鳥海青児氏旧蔵の十一面観音像(平安)、

香川道隆寺伝来、アメリカパワーズコレクションから里帰りした天部立像(平安前期)、

興福寺子院伝来、井上馨旧蔵の弥勒菩薩立像(鎌倉)、

でした。

十一面観音像(平安)~法隆寺伝来、鳥海青児旧蔵
十一面観音像(平安)~法隆寺伝来、鳥海青児旧蔵

天部像(平安)~香川道隆寺伝来、パワーズコレクション旧蔵.弥勒菩薩像~興福寺子院伝来、井上馨旧蔵
(左)天部像(平安)~香川道隆寺伝来、パワーズコレクション旧蔵
(右)弥勒菩薩像~興福寺子院伝来、井上馨旧蔵


それぞれに、個人コレクションに相応しい名品で、なかなかの魅力ある像でした。



この日は、この後ちょっと仏教美術の古美術店を覗いたり、泉屋博古館で開催中の木島櫻谷展を観たりして、何やら心静かな落ち着いた京都の一日になりました。

泉屋博古館「木島櫻谷展」ポスター


飲み食いの方もそんな気分を反映したものとなりました。
お昼は、烏丸麩屋町の「手打ちそば 花もも」。

手打ちそば 花もも
手打ちそば 花もも

京都には意外に美味なる蕎麦屋が少ないのですが、此処はグッドでした。
夕方時ごろで閉店とのこと、夜飲めないのは残念。

夜は、知り合いと宮川町のお茶屋さんでちょっとだけ愉しんで、その後は、「酒陶 柳野」へ。

酒陶 柳野
酒陶 柳野

三条新町にあるバーです。
素木のカウンター、聚楽壁というシンプル&モダンの落ち着いた雰囲気。

「酒陶 柳野」カウンター
「酒陶 柳野」カウンター

河原町三条の「直珈琲」と同じ木島徹氏の内装設計。

「直珈琲」カウンター
「直珈琲」カウンター

気持ち良い余韻で、お酒が進んだ一日となりました。



【大行列、大混雑の京博「国宝展」~お目当ては超絶技巧の仁和寺・薬師檀像】


翌日は、京都国立博物館で開催の「国宝展」へ。

京博「国宝展」ポスター


昨日の落ち着いた心静かな雰囲気と打って変わって、朝から60分待ちの大行列。
やっとこさ入場すると、会場は大混雑。
人ごみにあてられっぱなしで、ボーっとして何を見たのやら、名品もうわの空となりました。
国宝仏像の出展は、ご覧のとおりでした。

観仏リスト①京博「国宝展」展示仏像


お目当ては、なんといっても、仁和寺の薬師如来坐像。
康和5年(1103) 円勢・長円作、像高10.3㎝という小檀像です。

仁和寺・檀像薬師如来像
仁和寺・檀像薬師如来像

長らく霊明殿に秘されていましたが、昭和61年の学術調査で発見確認されました。
発見後も秘仏で、めったに公開されることは無く、平成11年東博の「金と銀 展」公開されて以来、18年ぶりの公開です。
拡大鏡でしっかり見ないとよく判りませんが、極めて精巧な彫刻、超絶技巧といえる美しく微細な截金文様には、本当に驚愕です。

その他の展示仏像は、普段からお馴染みなので、サラリと観てオシマイとなりました。



【年甲斐もないロングドライブに少々お疲れ~鳥取・島根・播磨観仏旅行】


同好の方々と、鳥取、島根、播磨方面観仏旅行に2泊3日で出かけました。

この観仏旅行の目的は、2つ

島根県立古代出雲歴史博物館で開催される「島根の仏像展」を観に行くこと。

播磨清水寺の秘仏十一面観音像の30年に一度の御開帳を拝しに行くこと。

でした。

折角行くのだからと、鳥取、島根、播磨の見どころある仏像を巡ることにしました。
それにしても、鳥取スタート、出雲、播磨経由で新大阪到着というロングドライブです。
走行距離は、ほぼ600キロで、ドライブだけでヘロヘロになってしまいました。

鳥取島根方面に観仏先は、「島根の仏像展」展示仏像を除くと、ご覧のとおりです。

観仏リスト②鳥取島根観仏



【北栄町に在る二つの観音寺(瀬戸・東高尾)へ~瀬戸の観音像は、東高尾からの勧請仏】


まずは、鳥取砂丘コナン空港から、東伯郡北栄町に在る二つの観音寺へ。
瀬戸に在る観音寺と、東高尾に在る観音寺です。

瀬戸観音寺には、小さなお堂に、一木彫の十一面千手観音像が祀られています。

瀬戸・観音寺
瀬戸・観音寺

ほぼ等身の一木彫像、平安中期ぐらいの古仏とされていますが、それにしてはスリムでキリリと締りのある造形です。

瀬戸観音寺・千手観音像

瀬戸観音寺・千手観音像
瀬戸観音寺・千手観音像

衣の彫り口の鎬だった衣文などに、平安前期の空気感を残しているようです。
ご住職のお話によると、後世の補修で、眼が玉眼になっていたりしたそうですが、平成2年(1990)に美術院によって大幅な修理修復が行われ、その時に元の彫眼に戻して、今のお姿となったということでした。
この観音様は、もともとは東高尾・観音寺にあったもので、江戸時代、正徳3年(1713)に瀬戸の大庄屋・武信家が住民の信仰のため、千手観音像を勧請して一堂を建立したことに始まるのだそうです。



【50余体の破損仏が肩を寄せ合う姿は壮観~東高尾・観音寺】


東高尾・観音寺に行きました。
由良川をさかのぼった山あいにひっそりとお堂と収蔵庫が佇んでいます。

東高尾・観音寺
東高尾・観音寺

今は、無住のお堂となっていますが、此処にはなんと、50体ほどの木彫仏、破損仏が遺されているのです。
管理の方に収蔵庫の扉を開いていただくと、大量の破損仏の姿がどどっと目に飛び込んできます。

大量の破損仏が肩を並べる東高尾・観音寺収蔵庫
大量の破損仏が肩を並べる東高尾・観音寺収蔵庫

全体としては平安古仏のようですが、造られた時代はマチマチのようです。
この仏像群は、戦国時代に大日寺(倉吉市桜)が焼き討ちされたために移されたとの伝えがありますが、この辺りの古仏が、いつの頃か一箇所に集められてきたものなのかもしれません。

東高尾観音寺・十一面観音像
東高尾観音寺・十一面観音像

東高尾観音寺・天部像(破損仏)東高尾観音寺・天部像(破損仏)
東高尾観音寺・天部像(破損仏)



【抜群のプロポーションが心惹きつける千手観音像~伯耆随一の魅力あふれる古仏】


なんといっても、魅力的なのは、ひと際大きな、千手観音像です。

東高尾観音寺・千手観音像
東高尾観音寺・千手観音像

内刳りのない一木彫像。
真正面、こちらを向いて凛と立っています。
伸びやかなエネルギーを、強く感じる素晴らしい平安古仏です。。
ハイウエストでスマートな体つき、いわゆる平安初期彫刻の強烈なボリュームやゆがみは無いのですが、パワー、パンチ力は十分。

東高尾観音寺・千手観音像
東高尾観音寺・千手観音像

肉付きは豊かでむっちり、クビれるところはクビれて、きりっとした締まりある身体ですが、変な妖艶さは感じません。
昔の女優に譬えれば、ソフィア・ローレンというところでしょうか?
~それにしても余りに古い、もう齢ですね~

東高尾観音寺・千手観音像東高尾観音寺・千手観音像
東高尾観音寺・千手観音像
東高尾観音寺・千手観音像

山陰の風土には似合わない、明るく健康的、伸びやかな雰囲気です。
むしろ、大陸的なおおらかさを発散しているようです。
愛媛の庄部落の菩薩立像も、鄙の地に在りながら、ハイウエストで腰がくびれ、どこかしら大陸的な空気感を感じさせますが、そうした系譜に在る像なのでしょうか?

愛媛庄部落・菩薩像
愛媛庄部落・菩薩像

この千手観音像、相当古そうな感じです。
平安前期どころか、8世紀に遡るかもしれない、という考えもあるようです。

いずれにしても、圧倒的に心惹き付ける魅力十二分の、大好きな平安古仏です。
これで3度目ですが、拝するたびに、その思いが強まってきます。

同好の人には、
「それほどの仏像とは思わない。」
とネガティブな感想の方もいたのですが、
「鳥取島根で、あなたの一番好きな古像を選んでください。」
と云われると、私は、この東高尾観音寺の千手観音像を選ぶことでしょう。

山陰屈指の魅力溢れる像だと思います。


東高尾観音寺をじっくり堪能した後には、倉吉市桜に在る大日寺へ。

大日寺
大日寺

大日寺には、嘉禄2年(1226)の造像銘を有する、鎌倉時代の阿弥陀如来坐像が祀られています。

大日寺・阿弥陀如来像
大日寺・阿弥陀如来像

なかなかしっかりとした安定感のある鎌倉の阿弥陀像でした。

この後は、
上淀廃寺に寄って、白鳳の寺院址と「上淀白鳳の里展示館」を見学。

上淀廃寺址
上淀廃寺址

上淀白鳳の里展示館の上淀廃寺安置の塑像仏の想像復元像
上淀白鳳の里展示館の上淀廃寺安置の塑像仏の想像復元像

安来の清水寺の宝物館では、巨大な阿弥陀坐像や阿弥陀三尊像、近年発見され重要文化財に指定された摩多羅神像(嘉暦4年・1329在銘)などを拝しました。

安来・清水寺境内
安来・清水寺境内

清水寺宝蔵・安置仏写真掲載のパンフレット清水寺宝蔵・安置仏写真掲載のパンフレット
清水寺宝蔵・安置仏写真掲載のパンフレット

この日の夜は、松江泊。
松江の居酒屋の名店「やまいち」で一杯。

松江居酒屋「やまいち」
松江居酒屋「やまいち」

刺身も煮付けも。どれもこれも新鮮美味。
小さなお店ですが、常連さんらしき人で満席、愉しく、気さくに飲めるグッドなお店でした。


翌日は、朝一番で出雲大社にお参りした後、島根県立古代出雲歴史博物館へ。

出雲大社
出雲大社

島根県立古代出雲歴史博物館
島根県立古代出雲歴史博物館

お目当ては、「島根の仏像展」です。



【島根の見どころある平安古仏が勢ぞろい~圧巻の「島根の仏像展」】


この特別展「島根の仏像~平安時代のほとけ・人・祈り~」は、島根県に遺る「平安時代の仏像」にスポットを当てた特別展です。
島根の平安古仏のほとんどが集結するといってもよい、大注目の展覧会です。

ちょっと数が多くなりますが、出展仏像のリストを掲載させていただきますので、ご覧ください。

観仏リスト③「島根の仏像展」展示仏像


島根県の平安時代の仏像をみると、重要文化財に指定されている仏像が15件、県指定文化財に指定されている仏像が14件あります。
展覧会には、そのうち重文指定像が11件、県指定仏像が10件が、出展されているのです。
この他にも市指定、無指定の平安古仏も多数出展され、全部で35件の出展となりました。
これだけの展覧会、もう当分開催されることは無いと思います。

ちなみに、展覧会に出展されない平安時代の重文仏像4件のうち、清水寺の阿弥陀像2件と巖倉寺の観音像は、この旅行で観仏に訪れましたので、今回旅行での島根の重文平安古仏の見残しは、大寺万福寺の観音像(2躯)のみということになります。

まさに、「島根の見どころある平安古仏総浚え」の観仏旅行になりました。



【圧倒的存在感で眼を惹いたのは、やはりこの三つの仏像
~清水寺、大寺万福寺、仏谷寺】


展覧会場に入ると、圧倒的に眼を惹いたのは、やはりこの3件の平安古仏でした。

清水寺の十一面観音像、大寺万福寺の四天王像、仏谷寺の薬師如来像、四菩薩像

です。
それぞれ圧倒的な存在感で、観覧の人々が足を止めて見入っていました。

今更ご紹介するまでもないのかもしれませんが、

土俗的な妖しさを発散する、清水寺・十一面観音像
どっかと脚を据えて、天平の堂々たる風格をしのばせる、大寺万福寺・四天王像
意志を秘めた紅顔の青年を思わせる、仏谷寺・薬師如来像

やはり出雲を代表する魅力的平安古仏です。

安来清水寺・十一面観音像
安来清水寺・十一面観音像

大寺万福寺・四天王像
大寺万福寺・四天王像

仏谷寺・薬師如来像
仏谷寺・薬師如来像



【注目の未見、新発見仏像は、この3寺の仏像~高野寺、長安寺、隠岐清水寺】


この他に、私が初めて観る仏像にも多数出展されていて、興味深い仏像がいくつもありました。
なかでも眼を惹いた注目仏像だったのは、次のような古仏です。

出雲市高野寺の聖観音像、雲南市長安寺の十一面観音像、菩薩像は、それぞれ近年その存在が発見確認された新出像です。
いずれの像も古様で、平安前期の雰囲気を残しています。
高野寺・聖観音像は奈良風のシルエットで、9世紀作の作かとみられ、出雲地方最古の木彫仏の可能性があるそうです。

高野寺・聖観音像
高野寺・聖観音像

長安寺の2躯もなかなかで、とりわけ菩薩坐像の方は、バランスのとれたプロポーションで興味津々の像でした。

長安寺・十一面観音像長安寺・菩薩像
長安寺・十一面観音像(左)、菩薩像(右)

もう一つ、未見の仏像のなかでは、隠岐島海土町・清水寺の聖観音像が眼を惹きました。

隠岐清水寺・聖観音像.隠岐清水寺・聖観音像によく似る仏谷寺・伝日光菩薩像
隠岐清水寺・聖観音像(左)と、よく似る仏谷寺・伝日光菩薩像(右)

美保関仏谷寺の菩薩像とそっくりと云ってもよい雰囲気の一木彫像です。
美保関は隠岐島の対岸と云ってもよい場所で、隠岐と島根半島の二つの港の近隣に、形の似ている二つの仏像が遺されているというのは大変興味深いことです。

「島根の仏像展」で、出雲の平安古仏をたっぷり堪能することが出来ました。
地方の博物館でのこれだけ充実した展覧会は、そうめったにあるものではありません。
わざわざ飛行機でここまで出かけてきた甲斐がありました。



【神木、霹靂木からの苦心の木取り造仏か?~体を捻った巖倉寺・聖観音像】


「島根の仏像展」の後は、安来市広瀬町に在る巖倉寺・聖観音像の拝観に訪れました。
展覧会に出展されなかった重要文化財の平安古仏の一つです。

門前から石段をしばらく登っていくと、小さな本堂があり、そこに祀られていました。

巖倉寺本堂
巖倉寺本堂

ご住職のご案内、ご丁寧な説明でゆっくり拝することが叶いました。
聖観音像は、少し腰を捻って居るのですが、捻っているというよりは、ぎこちなく体を曲げている様子で上半身と下半身の動きがちぐはぐな感じがします。

巖倉寺・聖観音像

巖倉寺・聖観音像
巖倉寺・聖観音像

この像は、手先、前膊部の一部を除いて、内刳りのない一材で蓮肉まで一木で造られているのです。
一材から彫り出すために、相当に無理をした木取りから彫出された像のようなのです。
神木とか霹靂木を用いて彫られた像なのかもしれません。
こうしたタイプに仏像は、一般には地方的要素ということで片づけられてしまうのかしれませんが、熟達仏師ではない人の深い信仰の所産というふうにも思いたくなりました。
全体としては、彫りも浅くなり穏やかな印象も出てきており、平安の中期頃の制作なのかもしれません。


この日は、安来市から兵庫県津山市までのロングドライブで、少々お疲れ。
津山泊。
夜は、イタリアンの「バル寅トラットリアバール」へ。

津山「バル寅トラットリアバール」
津山「バル寅トラットリアバール」

NETで調べたのですが、駅前のタクシーが「名前も場所も知らない」という店でビックリ。
地元の人しか行かない店のようですが、これが大当たり。
料理もワインもコスパもベリーグッドで大満足。
東京に在れば、しょっちゅう行きたくなるほどの店でした。
津山に、美味いイタリアンバルあり。



3日目は、播磨地方観仏です。
佐用町の瑠璃寺、姫路市夢前町の弥勒寺、加東市の播磨清水寺を訪ねました。

観仏リスト④播磨観仏



【張りのあるボリューム感みなぎる瑠璃寺・不動明王像~出色の平安古像】


瑠璃寺は随分山中の鄙びたところに在りました。
いくつかのお堂があり、めざす不動明王像は護摩堂に祀られています。

瑠璃寺・護摩堂
瑠璃寺・護摩堂

重要文化財の立派なお像なのですが、ご一緒の案内もなく、どうぞお堂で自由に拝んでくださいとのことで、眼近にゆっくりじっくり拝することが出来ました。
9~10世紀、平安前中期の大師様の不動明王像です。
昭和61年(1986)の瑠璃寺調査で発見確認された像で、昭和63年(1988)重要文化財に指定されました。

瑠璃寺・不動明王像

瑠璃寺・不動明王像

瑠璃寺・不動明王像
瑠璃寺・不動明王像

流石、平安前中期の不動明王像、パワフルでダイナミック、迫力十分です。

「張りのあるボリューム感がみなぎっている。」

こんな印象を強く持ちました。
お顔の造形も魅力的で、惹きつけるものがあります。。
これだけ出色の平安中期不動像が、播磨の片田舎に遺されているのには、ビックリしてしまいました。
世にあまり知られていない「かくれ仏」と云ってもよいかもしれませんが、ここまで訪ねて拝する値打ち十分の平安古仏でした。



【30年に一度の秘仏御開帳を目指して、播州清水寺へ
~粗略のなかに強い祈りこめられた観音像】


播磨清水寺の秘仏本尊、十一面観音像の御開帳に訪れました。

播磨清水寺は西国三十三観音、二十五番霊場で諸堂を有する大伽藍です。

播州清水寺・山門
播州清水寺・山門

本尊・十一面観音像は、厳重秘仏で30年に一度ご開帳となっています。
本尊十一面観音像、脇侍の毘沙門天像、吉祥天像は、前回ご開帳の昭和62年(1987)に修理され加東市の文化財に指定されています。

流石に、西国三十三ヶ所札所の厳重秘仏御開帳ということだけあって、大勢の人々が、紅葉を愉しみがてら、参拝に訪れていました。

播州清水寺・本堂
播州清水寺・本堂

本尊の祀られる「内陣特別ご拝観」が出来ましたが、順にご参拝ということで、そうじっくりとは拝することが出来ませんでした。
十一面観音像は、一見、簡素で粗略に過ぎる造形の地方仏という印象で、手練れの仏師の作ではなく僧侶が祈りをこめて彫った霊像という感がします。

播州清水寺・秘仏十一面観音像
播州清水寺・秘仏十一面観音像

不思議なオーラを発散させるようなところもあり、寺伝に「法道仙人一刀三礼の観音像」という伝えがあるのも頷ける処です。
厳重秘仏のためか、制作年代についてのコメントのある資料が見つかりませんでしたが、いつの頃の制作かを判断するのは、なかなかに難しいというのが実感でした。



【12 月】



「今年の観仏を振り返って」も、やっとのことで12月となりました。

12月は、東大寺法華堂・執金剛神の御開扉に出かけるとともに、天平会例会に参加しました。



【4年ぶりに再会~良弁忌に御開扉の法華堂・執金剛神像】


法華堂・執金剛神の開扉の日は、年に一日限り、良弁忌の12月16日です。
執金剛神を拝しに出かけるのは、4年ぶりです。
いつもながらの大変な参拝者の数で、長い行列に並んでの拝観です。
執金剛神が祀られる北面の厨子の前では、そう長い時間はとどまっていることが出来ない状況で、結局3度も列に並んで、拝することになりました。

東大寺法華堂・執金剛神像
東大寺法華堂・執金剛神像

素晴らしい出来の執金剛神像なのですが、いつもながら、体勢に微妙なぎこちなさを感じてしまいます。
拝し終わったその足で、戒壇堂の方へ廻って、四天王像を見てきました。

東大寺戒壇堂・四天王像(増長天像)
東大寺戒壇堂・四天王像(増長天像)

見較べてみると、四天王像の造形の方に、どうしても円熟味とバランスの良さを感じます。
やはり、制作年代に、微妙な年数の差があるのでしょうか?

この日は、開山堂の良弁像も御開扉です。

良弁像御開帳の東大寺開山堂
良弁像御開帳の東大寺開山堂

これまた、行列に並んで拝してきました。
こっちの方が、眼近にじっくり拝することが出来ました。

良弁像~開山堂御開帳チラシ
良弁像~開山堂御開帳チラシ



【さながら室生寺ミニ企画展の奈良博・なら仏像館
~弥勒堂・釈迦像の見事な男ぶりに惚れ惚れ】


奈良博・なら仏像館へ寄りました。

目当ては、室生寺弥勒堂の釈迦如来像と弥勒菩薩像です。
なんと、あの男ぶりの良い、室生寺・釈迦如来坐像が奈良博に展示されているのです。
室生寺弥勒堂は、2017年7月20日~2019年3月末までの期間、全面改修工事を実施中で、その間、本尊・弥勒菩薩像と釈迦如来像が、奈良博に寄託展示されているというわけなのです。
室生寺では、弥勒堂の外からの拝観となっていて眼近に拝することが出来ませんが、明るい照明のもとで、ごくごく眼近でじっくりと観ることが出来ました。

室生寺弥勒堂・釈迦如来像
室生寺弥勒堂・釈迦如来像(平安・国宝)

釈迦如来像は、流石、この仏像が大のお気に入りという人が、沢山いるだけのことがある魅力的な仏像です。
背面から内刳りがされ、長方形の蓋板がはめられているのですが、奈良博では後方から観ることが出来て、蓋板がはめられた線まではっきり確認することが出来ました。

奈良仏像館では、この二像の他に、室生寺の十二神将像二躯(鎌倉・重文)と帝釈天坐像(9~10C)、新発見の新発見の二天王像(9C)が展示されていました。
これらの像を集めて、「室生寺のミニ企画展」のようにして展示すれば、随分人気を呼ぶのではないかと思いましたが、如何でしょうか?


この日の夜は、知り合いと奈良女子大の南の「奈良 而今」で夕食。

奈良「而今」
奈良「而今」

去年の9月に開店した新しい店ですが、「美味いものなし」と云われる奈良で、懐石料理の人気店として、話題の店です。
ゆっくり愉しく飲らせてもらいました。



【コロタイプ複製技術の精巧さに感嘆、讃嘆~「便利堂創業130周年記念展」】


翌17日、午前中は、京都文化博物館で開催中の特別展、便利堂創業130周年記念「至宝をうつす-文化財写真とコロタイプ複製のあゆみ-」へ行きました。

京都文化博物館「便利堂創業130年記念展」ポスター


コロタイプ印刷というのは美しいが非効率ということで、ほぼ消えてしまった印刷技術ですが、便利堂は今もその技術を継承しています。
そのコロタイプ複製の歴史と、便利堂の130年の歴史を重ね合わせて振り返るという、興味深い展覧会です。
焼損前の法隆寺金堂壁画写真・全12面が展示されていたほか、高松塚古墳壁画写真やコロタイプ複製の美術作品の数々が展示されていました。

焼損前の法隆寺金堂壁画コロタイプ写真
焼損前の法隆寺金堂壁画コロタイプ写真

この世界に興味ある私には、こたえられない良き展覧会でした。



【天平会12月例会では、普段拝観が難しい京の諸仏を拝する
~万寿寺・阿弥陀像、法性寺・千手観音像など】


午後には、仏像探訪の同好会「天平会」の12月例会に参加しました。
探訪先は、ご覧のとおりです。

観仏リスト⑤天平会12月例会


万寿寺の阿弥陀如来坐像、金剛力士像は東福寺の宝物館、光明宝殿に安置されているのですが、なかなか公開されることがなく、一度は拝したいと思っていた仏像でした。
眼近に拝することが出来ました。

万寿寺(東福寺光明殿安置)阿弥陀如来像万寿寺(東福寺光明殿安置)金剛力士像
万寿寺(東福寺光明殿安置)阿弥陀如来像(左)、金剛力士像(右)

法性寺の千手観音像も、これまたなかなか拝することが出来ない仏像です。
近年は、二度ほど、京都非公開文化財特別公開で公開されることがありました。
天平会でも、ご拝観の了解をいただくのに、随分ご苦労されたとのことでした。
この超有名な国宝の優品、お寺とは思えない門構えのこじんまりしたお堂に祀られています。

法性寺
法性寺

その昔は、事前にお願いすると、眼近に拝することが出来たのですが、近年は非公開で、普段は拝することが出来ません。

法性寺千手観音像
法性寺千手観音像(平安・国宝)

私は、その昔に、何度も拝したことがありましたので、大変懐かしく、その素晴らしいお姿と再会させていただきました。


ようやく、2017年の観仏、総まくりのご紹介を終えることが出来ました。
なんのかんのといいながら、随分、数多くの観仏に出かけてしまいました。
「飽きもせず!」とは、よく言ったものです。

ダラダラ長々、一年の観仏探訪記録を自己満足的に綴らせていただきました。
辛抱してご覧いただき、ありがとうございました。


今年も、HP「神奈川仏教文化研究所」、ブログ「観仏日々帖」に、気ままな仏像記事を連ねていきたいと思っております。
よろしくお付き合いいただけますよう、お願いいたします。


コメント

播州清水寺

興味深い仏像でしたので、ご開帳に私も行って来ました。
仰る通り、制作年代はよく分かりませんでした。脇侍とも作風が違うような感じなので、同年代とは言えなさそうでした。
(さらに、毘沙門天像は平安時代作、吉祥天像は近世作に見えて、脇侍間でも制作年代が違うように思いました。)

素朴な微笑みは、内陣に祀られていた銅造の菩薩像と似ているように見えました。
もしかしたら、お顔の造形に影響を与えたのかもしれないと、勝手な想像を巡らせました。

  • 2018/01/08(月) 21:50:50 |
  • URL |
  • とら #VBkRmpN2
  • [ 編集 ]

Re: 播州清水寺

とら様

今年もよろしくお願いします

播州清水寺の観音像は、彫刻作品、仏教美術という観点からみると、採り上げられるタイプの像ではないということになるのでしょうね。
あの粗略さは、どのようにみたらよいのか、迷うというか悩ましく思ってしまいます
意外と時代が大分下がるのかもしれませんね

とはいっても、長らく信仰される30年に一度の厳重秘仏を拝し得たのは、収穫でした

管理人

  • 2018/01/11(木) 12:29:16 |
  • URL |
  • 神奈川仏教文化研究所 #-
  • [ 編集 ]

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