観仏日々帖

新刊・旧刊案内~「法隆寺学のススメ」高田良信著 【2015.6.12】


法隆寺の歴史や秘話の著作で知られる、元法隆寺管主・高田良信氏の最新刊の本です。


「法隆寺学のススメ~知られざる1400年の軌跡」  高田良信著
2015年3月  雄山閣刊  【222P】 2400円


法隆寺学のススメ

本書の内容については、目次をご覧いただければ、おおよそご想像いただけるのではないかと思います。
読んで、面白そうなテーマが盛り沢山に並んでいます。

法隆寺学のススメ・目次1

法隆寺学のススメ・目次2

法隆寺学のススメ・目次3

法隆寺学のススメ・目次4


私は、近代法隆寺の歴史や法隆寺学といわれるものに、大変興味、関心を持っておりますので、ちょっと値段が高いかなと思いましたが、購入してみました。

早速一読してみました。
太子創建から、明治維新以降の近代にいたるまでの、法隆寺の歴史のなかから、興味深い出来事や秘話、逸話をピックアップしてやさしく語られています。

高田良信氏は、本書の内容等について、あとがきにこのように書かれています。

「法隆寺の歴史に関心を抱いてから今年で60年目を迎える。
小僧の頃から、ホコリにまみれながら集めたり、写し取った資料に対する思い出は尽きない。

やがてそれをベースにした法隆寺年表を作成したり、法隆寺の歴史を調べることとなる。
特に私の悲願であった法隆寺昭和資材帳編纂や百済観音堂の建立勧進のために、全国都道府県で講演会をしたことは、研鑽を増進する機会ともなった。
そのようなときに話したり、執筆したものをベースとしてまとめたのが本書である。

その中には、ページの都合もあり法隆寺に関する重要なテーマが欠如していることも多いが、法隆寺1400年の流れを知っていただく法隆寺学の入門書と思っていただきたい。」


内容についてみれば、高田良信氏がこれまで執筆されてきた、多数の著作で折々に採り上げられたテーマと似通ったもので、特段に目新しい話、新事実の紹介などは、無いようです。
ただ、法隆寺の歴史のなかでの出来事、逸話などがコンパクトにまとめられており、一般向けの講演録などをベースに書かれているので、読みやすく、判りやすいものになっています。

高田良信氏があとがきで記されているように、

「法隆寺1400年の流れを知る、法隆寺学の入門書。」

としては、格好の一書であるように思います。
一読されてみてはいかがでしょうか?


ご存じのとおり、高田良信氏は、法隆寺208世管主・聖徳宗第5代管長を務め、現在、法隆寺長老ですが、
一方で、「法隆寺学」の確立をライフワークとしている研究者でもあります。

高田良信氏
高田良信氏
「法隆寺学」とは、高田氏によれば、
「法隆寺で展開された太子伝記の研鑽や教学・信仰・行事・歴史をはじめ、法隆寺につたわっている堂塔の建築・仏像(彫刻)・絵画・工芸・書籍・考古などに関するすべてを包括した学問体系。」
ということになるのだそうです。

この「法隆寺学」という学問フィールドを、自ら資料渉猟、研究を進め、大きく切り拓いた人物といえるでしょう。
法隆寺の知られざる歴史や逸話などを語らせれば、高田良信氏の独壇場であることは、皆さんご存じのとおりだと思います。

自ら、法隆寺学についての数多くの著作を執筆しており、皆さんも1冊や2冊は、読まれたことがあるのではないかと思います。
また、法隆寺に遺された歴史資料や文化財の公開、調査研究に積極的に取り組み、「法隆寺昭和資材帳」の刊行、「法隆寺史料集成」の刊行といった大著の出版を実現した立役者ともいえるのでしょう。


この「法隆寺学」といわれる世界のなかで、とりわけ私の関心興味は強いのは、「明治維新以降の近代法隆寺の歴史、出来事、秘話」といった事柄です。

近代法隆寺の出来事を振り返ってみると、

法隆寺献納宝物の皇室への献納、
夢殿秘仏救世観音像の天心・フェノロサらによる開帳、
維持資金捻出のための百万塔売却、
五重塔心礎空洞からの舎利容器の発見、
若草伽藍心礎の返還、
金堂壁画の模写事業と金堂炎上壁画焼損、
聖徳宗の開宗などなど、

忘れられない出来事がありました。

こうしたことを深く知ろうとすると、高田氏の諸著作に頼るしかありませんでした。
明治維新以降、今日に至るまでの近代法隆寺の様々な出来事や秘話を、世に広く知らしめたのは高田良信氏の多大なる功績だと思います。

このときにまとめてみた、近代法隆寺の出来事や秘話についてたどる話は、
神奈川仏教文化研究所HP~「埃 まみれの書棚」からに、「近代法隆寺の歴史とその周辺をたどる本」と題した読み物を掲載させていただいていますので、ご覧いただければと思います。


高田氏の著作を読んでいると、法隆寺という一寺院が、如何にしてあれだけの仏教美術の至宝を守り続けてきたのか、その間にどのような出来事、苦労話が潜んでいたのかを伺い知ることが出来、誠に興味深いものがあります。

高田良信氏の「法隆寺学」についての著作は、20冊をはるかに超えるものがあろうかと思います。

ウィキペディアで見てみると、主なる著作として、次のような本が挙げられていました。

『法隆寺のなぞ』(主婦の友社、1977年)
『近代法隆寺の歴史』(同朋舎、1980年)
『法隆寺子院の研究』(同朋舎、1981年)
『法隆寺の秘話』(小学館、1985年)
『「法隆寺日記」をひらく―廃仏毀釈から100年』(日本放送出版協会、1986年)
『日本の古寺美術〈1〉 法隆寺Ⅰ 歴史と古文献』(保育社、1987年)
『中宮寺法輪寺法起寺の歴史と年表』(ワコー美術出版、1984年)
『法隆寺の歴史と年表』(ワコー美術出版、1984年)
『シルクロードから来た天女―法隆寺・飛天開眼』(徳間書店、1988年)
『法隆寺の謎を解く』(小学館、1990年)
『追跡(ドキュメント)!法隆寺の秘宝』(徳間書店、1990年) 堀田謹吾との共著
『私の法隆寺案内』(日本放送出版協会、1990年)
『法隆寺国宝散歩―日本の美と心のふるさとを訪ねる』(講談社、1991年)
『法隆寺の謎と秘話』(小学館ライブラリー、1993年)
『法隆寺建立の謎―聖徳太子と藤ノ木古墳』(春秋社、1993年)
『法隆寺千四百年』(とんぼの本・新潮社、1994年)
『法隆寺の四季と行事』(小学館、1995年)
『世界文化遺産 法隆寺』(歴史文化ライブラリー・吉川弘文館、1996年)
『法隆寺の謎』(小学館、1998年)
『世界文化遺産 法隆寺を語る』(柳原出版、2007年)
『法隆寺辞典 法隆寺年表』(柳原出版、2007年)

凄い量で、びっくりしてしまいます。

数多くの高田良信氏の法隆寺学の著作
数多くの高田良信氏の法隆寺学の著作

ご関心のある方は、これらの本を繙いてみてはいかがでしょうか。

これから
「高田流・法隆寺学についての本を読んでみようかな!」
と思われる方に、
多数の著作のなかから、私のお薦め本を3冊選ぶとすると、迷ってしまいますが、次のとおりです。


「近代法隆寺の歴史」  同朋舎・1980年刊  【189P】   2800円

近代法隆寺の歴史


「『法隆寺日記』をひらく―廃仏毀釈から100年」   日本放送出版協会・1986年刊   【215P】  750円

法隆寺日記をひらく

この2冊を読むと、明治維新以降の法隆寺の歴史、主要な出来事・エピソードなどを詳しく知ることが出来ます。



「世界文化遺産 法隆寺を語る」   柳原出版・2007年刊   【265P】   2200円

世界文化遺産 法隆寺を語る

最新刊の「法隆寺学のススメ~知られざる1400年の軌跡」の類書といって良い内容です。
「法隆寺学のススメ」同様に、やさしく判りやすい語り口で、法隆寺の歴史と出来事が記されています。



最後に、高田氏が、現在執筆中の法隆寺学の論考を、ちょこっとご紹介しておきます。

「法隆寺学入門」と題する連載で、聖徳宗教務部刊の「聖徳」という機関紙・雑誌に掲載されています。
現在、連載途上ですが、もう五十数回を超えているという長期連載です。
聖徳太子、法隆寺創建から始まって、直近、大正末年頃の法隆寺の出来事あたりの話まで来たところです。

この連載は、これまでの調査研究成果をしっかり渉猟し、大変詳しく述べられた論考といっても良いもので、まさに高田良信氏の「法隆寺学研究の集大成、真骨頂」とでもいうべきものだと思います。


連載が完結すると単行本として出版されるのではないかと期待をしています。
何時頃、完結するのかわかりませんが、秘かに楽しみにしています。

コメント

目次を見ると、古代から現代までの法隆寺の歴史が概観できそうですね。法隆寺はしばらく訪れていませんが、また行ってみたくなりました。

大変な苦労があったとはいえ、日本仏教の歴史の原点とも言える法隆寺が、(若草伽藍の焼失後ですが)今日まで古代の姿を残していることが本当にありがたいことだと思います。
何度も通っているわけではないのですが、寺宝展などで仏像をはじめとして、毎回違った宝物が出品されているところなど、残された寺宝の多さにも驚かされます。
法隆寺は本当に凄いです。

  • 2015/06/14(日) 21:03:02 |
  • URL |
  • とら #VBkRmpN2
  • [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://kanagawabunkaken.blog.fc2.com/tb.php/83-422e3ed2
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)