観仏日々帖

新刊旧刊案内~「福岡県の仏像」アクロス福岡文化誌編纂委員会編  【2014.8.2】


福岡県の仏像を紹介した本が刊行されました。


「福岡県の仏像」アクロス福岡文化誌編纂委員会編

2014年3月 海鳥社刊 【165P】1800円


「福岡県の仏像」


奥付には、2014年3月31日刊と書かれていますが、出来上がりが遅れて、実際にはこの7月に、やっと発売されたばかりの本です。

アクロス福岡文化誌の第8冊として刊行されたもので、国指定重要文化財、県指定文化財の仏像を中心に、約100躯の仏像が、カラー写真で紹介され、解説が付されています。
福岡県の仏像について、判りやすく手軽に知ることが出来る本だと思います。


「アクロス福岡」というのは、これまで聞いたことがなかったのですが、NETで調べてみたら、福岡の中心・天神に在る公民複合施設だそうです。
当地のランドマークで、福岡シンフォニーホール、国際会議場、オフィス、ショップなどが入る14階建てのビルでした。

「アクロス福岡文化誌」という本は、福岡県の地域文化・伝統文化の掘り起こしや保存活動の促進を目的に「ふるさとの文化」を幅広く紹介するため、毎年1巻ずつ刊行されているそうです。
これまでには、「福岡県の名城」「福岡県の神社」「福岡の祭り」などといった本が刊行されていました。

このシリーズの第8弾として、今回「福岡県の仏像」が刊行されたということです。


福岡県の仏像だけを採り上げた本というのは、お目にかかったことがなかったので、早速購入しました。
パラパラとページをめくると、福岡の仏像、約100躯が、カラー写真で紹介され、簡単な解説が載せられています。

「福岡県の仏像」内容

「福岡県の仏像」内容


ページ数の制限もあるのでしょう。
ひとつの寺院に割かれたページ数は、1~2ページで、仏像の写真は、正面写真が1枚、これに解説が付されるという体裁です。
解説は、大変平明に判りやすく書かれています。

どのような仏像が採り上げられているのでしょうか?

目次をご覧ください。

「福岡県の仏像」目次1

「福岡県の仏像」目次2


このような仏像が、紹介されています。

執筆は、総説を八尋和泉氏が担当し、ご覧のようなメンバーが解説を担当されています。
九州仏教美術の専門家陣による執筆です。

「福岡県の仏像」執筆者


コンパクトな福岡県の仏像の紹介本は、これまでなかっただけに、大変有難い本だと思います。

福岡県の仏像と云うと、なんといっても大宰府・観世音寺の巨大な仏像群のことが思い浮かびます。
観世音寺の仏像を別格とすれば、意外に、知られていないのかもしれませんが、なかなか魅力あふれる仏像が、数多く残されています。


私が、強く印象に残っている仏像は、鞍手郡の長谷寺・十一面観音立像と糸島市の浮嶽神社の諸仏です。
共に、お気に入りの仏像です。

かつて、神奈川仏教文化研HP・埃まみれの書棚から「地方佛~その魅力に ふれる本~」で、九州の仏像についてふれたとき、「私の好きな九州の仏像」NO1・NO2に、この二つの仏像を採り上げています。
思い出すと懐かしくなりましたので、少々恥ずかしいのですが、その時の文章を転載させていただきます。

次のような文章です。

九州地方は、中国、四国地方にくらべて、これといった平安木彫の優作が少ないように思うが、そのなかで私の好きな仏像を選んでみると、

観世音寺の諸像は、別格番外として、

 NO1は、福岡鞍手郡、長谷寺の十一面観音像

 NO2は、福岡糸島郡、浮嶽神社の薬師如来ほか諸像

 NO3は、大分豊後高田市、国東半島の熊野磨崖仏

この仏像たちがBEST3になったが、いかがだろうか?


鞍手郡長谷寺・十一面観音像
鞍手郡長谷寺・十一面観音像
鞍手町長谷にある長谷寺は、福岡 と小倉の中間辺り、遠賀川沿いの炭鉱の街・筑豊直方からそう遠くない所にある。
私が、同好の人たちとこの長谷寺を訪れたのは、今か ら2年ほど前、H16年の秋のことであった。
長谷寺・十一面観音像については、これまで写真では知っていたが、さほど大きな期待を していない仏像であった。

「まあこの像も、平安中期仏のひとつとして観ておくか」

こんな気持ちで長谷寺を訪 ねたのだが、ご住職に案内され、お堂で十一面観音像を拝し、その堂々たる力強い姿を眼の当たりにした途端、
「私の好きな九州の仏像NO1」
に、一気にラン クアップしてしまった。

「ドーンと腹に応えるように、迫ってくる。
それも、鋭利な刃物で切り込んでくるといったものではなく、鉈で ドスンと打ち下ろしてくるような重厚なパワーを感じる。」

そんな魅力を訴えてくる仏像であった。

びっくりす るほどに太く造られた腕、グリッと抉られ粘るようにうねる衣文、引き締まってはいるが何処か固い感じのするモデリング、そのそれぞれがこの仏像の力強さを 誇示しているようで、その迫力に引き込まれてしまう。

鞍手郡長谷寺・十一面観音像
鞍手郡長谷寺・十一面観音像

じっくりと拝していると、

「この 十一面観音は、古代の金銅仏を手本にしたりイメージしながら、貞観仏の手法、形式で造った仏像なのじゃないだろうか?」

あり得ない こととは思いつつ、そんな気持ちになって来る。

それは、この像がクスノキという堅材で造られていること、顔面 や肌の表現がなにか金属質な感じをさせること、両眉を連続させた表情や姿態に異国的・外来的要素を意識させることなどが、そんな気分に誘い込むのかもしれ ない。

鞍手郡長谷寺・十一面観音像
鞍手郡長谷寺・十一面観音像

単なる貞観彫刻が地方化した仏像という概念では捉えきれない、不思議な魅力を発散する仏像である。


NO2 は、浮嶽神社の仏像。

浮嶽神社は、筑後富士と呼ばれる「浮嶽」の中腹にある。頂上には、浮嶽神社上宮という社 があり、航海の神として祀られている。
浮嶽からは、すばらしい眺望が開け、眼下に唐津湾や虹の松原を望み、はるかに玄界灘を見晴る かすことが出来る。

浮嶽から望む玄界灘
浮嶽から望む玄界灘

そしてまた、浮嶽神社では、この美しい景色にふさわしいような、伸びやかな古佛たちに出会うことが出来る。

浮嶽神社の諸像
浮嶽神社の諸像

地蔵菩薩立像、如来立像、仏坐像の3体が、重要文化財に指定されているが、まさに、オーソドックスな平安前期仏。
ゆったりと落ち着いた気分で、そのすばら しさに触れることが出来る。

浮嶽神社・地蔵菩薩像....浮嶽神社・如来立像
浮嶽神社・地蔵菩薩像(左)・如来立像(右)

それぞれの造像時期には違いがありそうだが、奈良・中央の優作である元興寺薬師像や橘寺日羅像、融念寺 地蔵菩薩像といった、いわゆる典型的貞観木彫の系譜の延長線上にある像だ。
伸びやかで堂々たる量感、厚い肉取り、力強い彫りや衣文 の処理など、しっかりバランスよくまとまった造形の像で、

「ああ、九州にも中央の貞観の息吹が、そのまま伝わったのだなー」

と、素直に好きになれる仏像たちだ。


ちょっと本題と関係のない、自己満足的な文章を、載せてしまいました。


本の紹介の話に戻りたいと思います。

近年までは、福岡県の仏像について解説した一般向けの本は、なかったのではないか思います。

昭和43年(1968)に明治百年記念で出版された、
「福岡県の文化財」(福岡県教育委員会刊)

昭和51年出版の
「国宝・重要文化財 仏教美術 九州1(福岡)」(奈良国立博物館刊)

昭和58年(1983)出版の
「福岡県の美術工芸品Ⅱ・彫刻」(西日本文化協会刊)

などが、
これまで出された本だと思いますが、いずれも教育委員会発刊の文化財記録や調査研究用の専門書的な本ばかりでした。

「福岡県の文化財」...「国宝・重要文化財 仏教美術 九州1(福岡)」

「福岡県の美術工芸品Ⅱ・彫刻」


今回出版された「福岡県の仏像」は、コンパクトなガイドブックといっても良いような本で、解説も大変平明で、かつきっちりした内容になっています。
福岡の仏像を知るハンドブックとしては、必携といっても良い本なのではないかと思います。
お手元に置かれることを、お薦めします。


ところで、この秋、特別展「九州仏」という展覧会が、福岡市博物館で開催されるということです。
丁度、「本書の発刊」のタイミングに合わせてというか、相呼応して「九州仏展」が開催されるということなのでしょうか?

博物館HPによると、

「九州の仏像の特色に注目し、普段は非公開とされる『秘仏』や、最近の調査で確認された新発見の仏像など約100点を公開します。

九州全体を対象とした仏像展としては、約半世紀ぶりの開催となり、これを機に奈良や京都の仏像とは違った魅力を持つ『九州仏』の魅力を紹介します。」

とあり、大変魅力ある展覧会になりそうです。

「九州仏展」ポスター..「九州仏展」ポスター
「九州仏展」ポスター

先ほど紹介した、長谷寺・十一面観音、浮嶽神社・諸仏も出展されます。
大変楽しみで、ぜひとも九州まで出かけねばと思っています。


8年前の平成18年(2006)には、同じ福岡市博物館で、「空海と九州のみほとけ展」が開催されました。

この展覧会は、
弘法大師空海が唐から帰朝して1200年の節目に当たり、古くから日本における大陸の接点を担ってきた福岡と入唐僧の九州における活動に注目しながら、北部九州の仏像100点を紹介する。
というものでした。

「空海と九州のみほとけ展」ポスター
「空海と九州のみほとけ展」ポスター

数多くの福岡県の古仏が出展されました。
これだけの仏像展を、よくぞ開催することが出来たものと、展覧会を観て、大いに驚いた記憶があります。
福岡の仏像については、この展覧会の図録が、一番参考になるのかもしれません。

「空海と九州のみほとけ展」図録
「空海と九州のみほとけ展」図録

福岡市博物館では、この「空海と九州のみほとけ展」に引き続いて、この秋「九州仏展」の開催です。
またまた、これだけ大規模な九州の仏像展を、市の博物館が開催するというのですから驚きです。
展覧会の企画、推進をされている方々の意気込み、素晴らしき展覧会の実現への「大拍手」を、送りたい気持ちです。

仏像愛好者にとってみれば、本当に嬉しき限りです。


皆さん、この秋には、「福岡県の仏像」の本を携えて、「九州仏展」に出かけられてはいかがでしょうか。

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