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観仏日々帖

トピックス~奈良時代の乾漆造・毘沙門天像が新発見(愛媛大洲市・如法寺)  〈奈良博で展示中〉  【2018.10.6】


【耳にした、奈良博に、さりげなく「新出の乾漆像が展示されている」という情報】


今年8月の、暑い盛りのことだったと思います。

仏像愛好の同好の人から、こんなメール連絡がありました。

「愛媛県大洲市の如法寺の毘沙門天像というのを知っていますか?
奈良時代・8世紀の木心乾漆像だということです。

奈良博の〈なら仏像館〉に行ったら、新出作品として展示されてました。

何も解説などが書かれていないので、これ以上のことは何もわかりません。
NET等で検索しても、何も出てきません。
かなりの出来で興味深いのですが、この仏像のこと、何か知っていますか?」

私も、「愛媛如法寺の毘沙門天像」など、聞いたこともなく、全くの初耳です。
何の情報もありませんでした。

確かに、奈良博〈なら仏像館・珠玉の仏たち〉の【展示目録】を見ると、第4室の処に、

「毘沙門天立像 1躯 奈良時代(8世紀) 愛媛 如法寺」

と掲載されています。

奈良国立博物館の展示目録(第4室)
奈良国立博物館の展示目録(第4室)

毘沙門天像の写真が何処にもなかったので、なんのイメージも沸いてこず、
「いまどき、奈良時代の乾漆像の新発見なんてあるのだろうか?
愛媛の地方のお寺に、乾漆造りの優品がのこされているなんて、ちょっと信じ難いように思うけれど・・・・」
というのが、率直なところで、
「いずれ秋口にでも奈良に出かけることがあったら、奈良博によって実物を見てみよう。」
と、心に留めたぐらいのことでした。



【10/1~奈良博が、「奈良時代の木心乾漆像を新発見」とプレス発表】


はたして、10月1日、奈良国立博物館は、

「愛媛県大洲市の如法寺が所蔵する毘沙門天像が、奈良時代の木心乾漆像であることがわかった。」

と、プレス発表したということです。

奈良時代の木心乾漆像と判明した、愛媛県大洲市・如法寺の毘沙門天像
奈良時代の木心乾漆像と判明した、愛媛県大洲市・如法寺の毘沙門天像

発表された毘沙門天像の写真を見てみると、

「これは、確かに間違いなく、奈良時代の木心乾漆像なんだろう。
かなり太づくりで、逞しくどっしりとした造形、なかなか魅力的なものがある。」

そのような印象を受けました。

奈良時代の乾漆像が新たに見つかるというのは、本当に珍しいというか、各地の仏像調査が進んだいまどき、「驚き!!」というしかありません。
それも、奈良ではなくて、愛媛の地方で発見というのは、まさにビックリです。



【マスコミ各社は、「愛媛の毘沙門天像、奈良時代の乾漆像と判明!」と報道~TVも新聞も】


マスコミ各社は、早速、「奈良時代の乾漆像、新発見!」を報道しました。

NHK NEWS WEB (NHK奈良放送局)は、

「愛媛の毘沙門天像は奈良時代の作」

というインデックスで、このように新発見ニュースを放送しました。

「愛媛県大洲市の寺にあった毘沙門天立像が、奈良時代に確立した技法でつくられた全国でも数少ないものだとわかり、奈良国立博物館は
『奈良時代の彫刻を研究するうえで貴重な資料だ』
としています。

この像は、愛媛県大洲市の如法寺に安置されていた高さおよそ30センチの『毘沙門天立像』です。

如法寺・毘沙門天像

如法寺・毘沙門天像
如法寺・毘沙門天像

寺には、大洲藩の藩士が江戸時代に、奈良県にある信貴山の僧から毘沙門天を得たという記述が残っていて、奈良国立博物館が、別の仏像の調査で偶然見つけ、CTスキャンなどを使い調査を行いました。

その結果、腰にまとった衣の様式やどっしりとした体つきなどから8世紀の奈良時代につくられたものと考えられるほか、漆と木くずなどを混ぜたものを木の芯に盛りつけて形づくる「木心乾漆造」という技法でつくられたものとわかりました。
奈良時代の『木心乾漆造』は全国でも数少なく、調査した奈良国立博物館の岩田茂樹上席研究員は、
『科学的な調査で詳しい製作技法もわかり、奈良時代の彫刻を研究するうえで貴重な資料だ』
と話しています。

この仏像は奈良国立博物館の「なら仏像館」で公開されています。」



奈良時代の木心乾漆像新発見を報ずる朝日新聞記事
奈良時代の木心乾漆像新発見
を報ずる朝日新聞記事
新聞各紙も、

「奈良時代の乾漆像と判明 愛媛の毘沙門天像」 (産経新聞WEST~2018.10.2付)

「愛媛で『木心乾漆造』仏像」 (読売ONLINE~2018.10.2付)

「愛媛の毘沙門天『木心乾漆』仏像~奈良期の技法 判明は異例」 (朝日新聞~2018.10.3付)

「愛媛・如法寺の毘沙門天立像 ~実はすごい!!と判明 8世紀、木心乾漆造 奈良博調査」 (毎日新聞~2018.10.2付)

といった見出しで、一斉に発見報道を掲載しました。



今回の発見について、各紙の報道内容などを参考に、簡単にまとめてみると、次のようなことかと思います。



【愛媛・如法寺の他の仏像調査の際、たまたま見つけられた毘沙門像】


この毘沙門天像は、2016年12月、奈良国立博物館の研究員の方が、如法寺が所蔵する別の仏像を調査するために訪れた際に、本堂厨子内に安置されているのを発見したそうです。
像高28センチの小さな像です。

如法寺には、鎌倉時代の県指定文化財の地蔵菩薩立像(建治2年・1276、法橋興慶作の足ホゾ銘)がありますので、この調査のためだったのかもしれません。



【CTスキャン調査などで、間違いなく奈良時代の木心乾漆像と判明】


この毘沙門天像を、奈良博でCTスキャンなどのX線透過撮影調査をしたところ、芯となる「心木」の周りに乾漆が数層重なっていることがわかりました。
3本の心木や金属心を使い、漆に木くずなどを混ぜた乾漆を盛りつけて造形しているようです。
いわゆる木心乾漆技法の仏像で、ふくよかな体形の特徴などから、奈良時代中期頃、8世紀半ば過ぎの作品とみられるそうです。

本像を調査した奈良博・岩田茂樹上席研究員は、

「造形がおもしろく、精彩に富んでいる。
これだけ構造と技法が分かった木心乾漆像は他にないだろう」
「小さい仏像だが歌舞伎役者のような躍動感がある」
「奈良時代の彫刻を研究するうえで貴重な資料だ」

このようなコメントをしていると、新聞報道されています。



【いまどき、考えられないほど珍しい、奈良時代木心乾漆像の新発見】


奈良時代の木心乾漆像が新たに発見されることが大変珍しいことであることはもちろん、愛媛県大洲市という地方で発見されたというのは、繰り返しになりますが、ちょっと考えられない大発見です。

奈良時代の木心乾漆技法による仏像は、全国で30件ほど程しかなく、そのほとんどは当時の都である奈良県内にあります。
聖林寺・十一面観音像、観音寺・十一面観音像、唐招提寺・千手観音像あたりが、最も有名どころの木心乾漆像です。

聖林寺・十一面観音像.観音寺・十一面観音像
(左)聖林寺・十一面観音像、(右)観音寺・十一面観音像

唐招提寺・千手観音像
唐招提寺・千手観音像



【どうして愛媛の地方のお寺に~元々の所在は、奈良方面のものか?】


その数少ない木心乾漆像が、奈良県ではなく、なんと愛媛県大洲市にあるお寺から見つかったというのです。
大洲市というのは、愛媛県の南西部、松山と宇和島との中間点あたりに位置します。

愛媛県大洲市の如法寺・本堂
愛媛県大洲市の如法寺・本堂

毘沙門天像の来歴については、如法寺に伝わる地誌「富士山志(とみすさんし)」に、このように記されているそうです。

「毘沙門天立像は、江戸時代に大洲藩士が奈良・信貴山で出会った僧侶から譲り受け、藩主の菩提寺である如法寺に寄進した。
南北朝時代の武将・楠木正成が身近に置いた念持仏だった。」

この記述がどこまで信拠すべきものであるかはわかりませんが、元々は奈良の地にあった仏像であるのは、確かなのかもしれません。
そうだとすると、この毘沙門天像が愛媛の地にあるのも納得、という処です。

元々、毘沙門天の独尊像であったのでしょうか?
四天王像のうちの多聞天像だけが残されたものでしょうか?
そこのところは、今では不明ということらしいですが、たくましく躍動感ある造形は、なかなか魅力的です。


この毘沙門天像は、現在も奈良国立博物館〈なら仏像館〉で展示されており、今後は、12月下旬まで展示予定だということです。

是非、機会を見つけて、一度は実見してみたいものです。



【近年、めったにない奈良時代以前の仏像新発見】


ところで、奈良時代以前の仏像の新発見というのは、全国の仏像調査がいきわたっている近年では、本当に珍しいことです。

私の覚えている限りの平成に入ってからの、奈良時代以前制作の仏像の新発見と云えば、

平成10年(1998)に発見された、三重県伊賀市・見徳寺の木造薬師如来像(1999年県指定文化財指定)

平成20年(2008)に発見された、高知県仁淀町・養花院の木造菩薩坐像(2010年重要文化財指定)

ぐらいでしょうか。

三重県伊賀市~見徳寺・薬師如来像.高知県仁淀町~養花院・菩薩坐像
(左)三重県伊賀市~見徳寺・薬師如来像、(右)高知県仁淀町~養花院・菩薩坐像

見徳寺・薬師如来像は、白鳳時代の童顔童形タイプの木彫像の発見でした。
養花院・菩薩坐像は唐招提寺木彫群の作風に通じる奈良時代檀像の発見でした。


たまたまですが、丁度、10年に一度の新発見となっています。

こうしてみても、今回の奈良時代の木心乾漆像の新発見は、仏像愛好者にとってみれば、なんともビックリのニュースでした。


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