沼田保男氏の、中国石窟・石仏探訪旅行記の第4弾、
の連載が、 神奈川仏教文化研究所HP でスタートします。
毎週、全9回連載で掲載させていただきます。
前回掲載の第3弾「中国河北省・山東省の古仏を訪ねて」から、ほぼ3年ぶりの中国仏像旅行記となります。
沼田氏の、並大抵ではないマニアックな中国仏像石窟の探訪、踏破ぶりは、これまで掲載の中国石窟旅行記をご覧いただいても、お判りのとおりと思います。
今回の「四川省 古仏探訪の旅」は、それに輪をかけてという感じの、普通ではなかなか訪ねるのが難しい石窟寺の数々を訪ねます。
四川省の石窟とか仏像といわれても、皆さん、余りなじみがないのではないでしょうか?
私などは、四川方面といわれると、大足石刻、楽山大仏という巨大石仏、成都万仏寺出土の石仏といった名前を、かろうじて知っているというぐらいです。
沼田氏の今回の四川方面探訪は、四川博物院で開催された大規模仏像展「梵天東土展」を観ることも、大きな目的であったということですが、
石窟寺などは、
「皇澤寺、広元千仏崖、巴中南・西龕、閬中大仏、碧水寺摩崖仏、梓潼千仏崖、蒲江飛仙閣」
といったところを巡っています。
唐代を中心とした北魏時代からの石仏龕ということですが、私には、全く聞いたこともないところばかりです。
余程のツァーでも、まず訪れることはない処だと思います。
旅程を段取りして、スケジュール予約するのも、マニアックすぎて難しかったようです。
沼田氏自身も、探訪記の中で、
「四川省でもメインの観光地から離れたほとんど人の行かない地であったにもかかわらず、往復のフライトと初日の宿のみ予約し、その後はまさに“出たとこ勝負”という信じ難い旅であった。」
と、綴られています。
地元のタクシーでも、場所が判らないといったことも、折々あったようです。
こうした誰も訪れないような石窟寺を巡れることが出来たのは、事前のターゲット・リサーチと、中国在住のご友人と共にごく少人数で巡った旅であったからこそと思います。
四川地域の石窟、仏像については、近年になって、注目を浴びてきているようです。
ご存知の通り、四川地域は、中国南北朝時代では南朝エリアにあります。
仏像遺品が豊富な北朝に比べ、極端に遺品が少ない南朝にあって、近代になって四川地域から相次いで石仏遺品が出土していることが、「仏像様式の南北議論」を活発にしているようです。
しかしながら、四川地域の仏像は、単純に南朝様式文化エリアという訳ではなく、唐代に至るまで、多様なルートでの文化伝播ルートが想定されるなど、中国仏教彫刻愛好家にとっては、大変興味深い処のようです。
一方で、四川地域の仏像について採り上げて論じたりする本も、ほとんどなくて、私の知っている限りでは、
「仏教美術から見た四川地域」 (奈良美術研究所編、2007年・雄山閣刊)
ぐらいしか、無いように思います。
今回の探訪記に綴られた、諸々の石仏についての鑑賞記や写真画像なども、これまでの日本の中国彫刻についての出版物では、ほとんど採り上げられていないのではないでしょうか。
「四川省 古仏探訪の旅」をご覧いただいて、「知られざる四川地域の古仏像」について知っていただくと共に、沼田氏ならではの深い造詣で綴られた旅行記を、是非、お愉しみいただければと思います。
これまで掲載させていただいた、沼田保男氏の中国石窟旅行記は、次のとおりです。
併せて、お愉しみいただければと存じます。
中国山西省 雲岡石窟・古寺・古仏 感動の旅 (2010年)
黄河上流域 遥かなる石窟の旅 (2011年)
中国河北省・山東省の古仏を訪ねて (2015年)